世界観

一日は、いちばん静かな色で終わる。

昼と夜のあいだには、名前のつかない時間があります。
西の空に残る橙、頭の上の淡い青、 そのあいだで揺れている薄い緑や紫。 ほんの十数分で消えてしまう色たちです。

私はその時間の空が好きで、 気がつくと立ち止まって見上げています。 急いでいた足が止まり、呼吸がゆっくりになり、 今日あったことが少しだけ遠くなる—— 夕暮れの空には、そういう力があると思うのです。

パステルは、粉の画材です。
指でこすると、色と色の境目がやわらかく溶けて、 空気そのものを描いているような気持ちになります。 移ろう空を描くのに、これほど似合う画材はありません。

パステル画「そのときの空」— 雲間からこぼれる夕方の光
そのときの空

描いているのは、遠くの絶景ではなく、 暮らしのすぐそばにある風景です。 帰り道の電線、港の白い船、誰もいない桟橋。 なんでもない場所が、暮れていく光の中で 一度だけの景色になる瞬間を描きとめたい。

絵を飾った部屋で、ふと目が合ったときに、 呼吸がひとつ深くなるような。 癒しと静けさ、そしてほのかな温かさが そばにあり続けるような。
そんな絵を、これからも描いていきます。

nini